2015年4月18日土曜日

美と醜を分類することは、なかなか難しい。人の内臓などを描く日本画家松井冬子の描いた原画の骨までむき出しになったハブを美しいと思う人は少ないだろうが、小石丸の細い絹糸で織られたこの帯は確かに美しい.


 誉田屋源兵衛は京都室町で創業280年を迎える「帯の製造販売」の老舗。現在は十代目である山口源兵衛が、代々受け継がれてきた技術とともに、「革新」の精神をもって、着物業界に次々と作品を発表している。いつお目にかかっても源兵衛さんは元気だ。
ボストン美術館所蔵の水墨画を銀で織った。
















室町通りにあった着物屋や帯屋の大半は姿を消したが「誉田屋源兵衛」は相変わらず盛況で世界中から数千万円を持ってコレクターが訪れる。中には登山家もいると聞いた。明日の命がわからない登山家は、この帯を前にして何を考えるのだろう。


美と醜を分類することは、なかなか難しい。作品名は失念したがロダンの太った男は現実のモデルは美しいとは言えないが作品は美しい。人の内臓などを描く日本画家松井冬子の描いた原画の骨までむき出しになったハブ、あるいは藤の花を降りていくと無数のスズメ蜂のモチーフが現れる。

















それらを美しいと思う人は少ないだろうが、小石丸の細い絹糸で織られたこの帯は確かに美しい。このトンボは人が仕掛けた網を破って逃げた生命力旺盛なトンボだ。布地にはその網も織り込まれていて、壮大な物語が帯一本に表現されている。












先週も源兵衛さんにお目にかかったときに、この帯はどんな風に締めるのか?と凡庸な質問をした。源兵衛さんは一言、この帯は締めません。とはっきり言った。日頃人々の利便性を考えるデザインの仕事につかっている気持ちが少し解放された。所詮役に立つモノはやれることに限界があると言うことだ。



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