2016年5月3日火曜日

「スペキュラティヴ・デザイン」は問題解決から、問題提起への変更。未来を思索するためにデザインができることの模索。

水野大二郎(デザイン研究者、デザインリサーチャー)+筧康明(メディアアーティスト、インタラクティブメディア研究者)と二人のもと慶應義塾大学SFCのプロジェクトXDのチーム仲間だった二人の「スペキュラティヴ・デザイン」の解説が面白かったのでそのまま抜粋。

相変わらず未来の話が飛び交う中、一定のデザインの未来を提示しているRCAやMITそしてSFCで起きている未来デザインの話。シンプルに言うと「問題を解決する」から「問題を発見する」へとデザインの定義が変更されてきた。

「今ある世界のため」から「実現しうる未来の世界のため」と未来を先にゴールと設定してから考えてみようというビジョン型への変更だろう。ただしアウトプットされたものはコンセプチュアル・アートに近い物が多い。
SPECULATIVE DESIGN – SAVE FOOD FROM THE REFRIGERATOR










この「スペキュラティヴ・デザイン」もビル・モグリッジがつくったRCAの「インタラクション・デザイン」学科あたりが源流のようだ。アンソニー・ダンが「スペキュラティヴ・デザイン」の提唱者。以下水野大二郎さんの話から。
The MeMo Organisation















「問題解決」のためのデザイン・プロセスの開発から、問いや視点を生み出し、アクションを経て、望ましい未来や「ヴィジョン」へと接続する「問題提起型」デザイン=「スペキュラティヴ・デザイン」へ。提唱者のアンソニー・ダン&フィオナ・レイビーは「ふつう理解されているところのデザイン」から「私たちが実践しているタイプのデザイン」へとして、このような次元を構想する。
5th Dimensional Camera(2010)/複数の平行世界で起きた出来事を撮影してくれる「5次元カメラ」














●「Affirmative」(肯定的)から「Critical」(批評的)へ
●「Problem solving」(問題を解決する)から「Problem finding」(問題を発見する)へ
●「For how the world is」(今ある世界のため)から「For how the world could be」(実現しうる世界のため)へ
●「The "real" real」("現実的"な現実)から「The "unreal" real」("非現実的"な現実)へ
●「Process」(プロセス)から「Authorship」(根源)へ ......

──アンソニー・ダン&フィオナ・レイビー
『スペキュラティヴ・デザイン』(ビー・エヌ・エヌ新社、2015)

1993年にクリストファー・フレイリングが3種類のデザインリサーチの方法を示し、99年にアンソニー・ダンが『Hertzian Tales』を発表、その後10年ほどで「スペキュラティヴ・デザイン」を確立させた、という流れがあった。

この数年で爆発的に広がった「スペキュラティヴ・デザイン」が対象とする領域はバイオ・テクノロジーから地球環境まで極めて広範に及びますが、スペキュラティヴ・デザイナーは作品に「私たちの判断を一時的に留保させる魔法をかけている」。そうすることによって、社会の未来像を対話の対象にしようと試みている。

以上をふまえ、今日のひとつのテーマである「なぜいまスペキュラティヴであることが要請されているのか」という問いについて考えてみよう。スペキュラティヴ・デザインは急進的な発想方法だが、それが要請されているのはなぜか。

現在、多くの企業は既存製品にちょっとずつ改良を重ね、バージョンアップを積み重ねた結果として素晴らしい製品を提供してきた。しかし、人間が技術によって生活様式を早く、大きく変えつつあるなかで、インクリメンタル(漸進的)なプロセスを採用しつづけることは企業にとって適切なのかという疑問に対峙する。

スペキュラティヴ・デザイナーがあえて「フィクショナルなヴィジョン」を提示することで、誰しもが技術の進化速度に対して漠然とした不安を抱えるなかでも、みんなと「ありうる」プロトタイプとしての未来像を議論する契機となりえている。
http://10plus1.jp/


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